2009年8月23日日曜日

平成21年 9月

入選   金岡春香

〇日本海遠くに見えるは佐渡島朱鷺の羽ばたき羨ましくて

(講評)作者の故郷は佐渡である。本学に入学するにあたって新潟市内で一人暮らしをしている。新潟の海岸線から佐渡を見ていると、自分が朱鷺なら好きな時に飛んで佐渡へ帰れると思った。

入選   長尾理菜

〇利用者と目と目が合うと微笑んで私も返す満点の笑み

(講評)実習生として高齢者施設の利用者とかかわった作者である。非言語的なコミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)による小さなかかわりが、大きな喜びに繋がった瞬間であった。

入選   高椅かなえ

〇最終日初めて笑った利用者の笑顔忘れず介護士目指す

(講評)実習中に笑ったことがなかった利用者が、実習最終日の口腔ケアを終えたところで初めて笑ってくれた。それが何より嬉しくて、励みの糧として結句の「介護士目指す」が響き伝わってくる。

入選   吉田加代

〇「また明日」介護実習最終日言われた言葉寂しくなった

(講評)実習最終日に重度の認知症を有する利用者から「また明日」と言われた。作者はそのことが嬉しいのだが、もう会う機会がないのかと思うと寂しくなった。利用者を思う作者の目は深くやさしい。

入選   石川順一

〇ボージョレーヌーヴォーワイングラス付きコンビニで買う11月末

(講評)「コンビニで買う」とは言い得て妙。ひとときの体験を歌にするのは楽しいし、日常の中にいくらでも短歌は見いだせる。


以上、選評  土永典明