2013年9月27日金曜日

平成25年10月 

入選    水科花奈子

〇実習中視線を感じて振り返る笑顔で見守る祖父の姿

(講評)たまたまショートステイを利用していた祖父が、筆者の実習風景を後ろから見守るように眺めていた。筆者の心の動きを、シャッターチャンスで捉えた。

入選    木戸思鶴

〇食事中会話が弾み笑顔出る距離が縮まる老いと私

(講評)筆者が実習中に利用者と打ち解けた瞬間である。ほのぼのとした雰囲気が伝わる。

佳作    石田千春

〇聞き返し「ダメだね私」と老いの声伝わってくる歯がゆい気持ち

(講評)老いは生き字引である。物事に執着することも尊重すべきだが、忘却もまた大切な一つである。


以上、選評    土永典明

平成25年 9月

入選    高野麻優

〇散歩して夏の終わりを感じ取る澄んだ空気と虫の鳴き声

(講評)肌に感じる空気、耳を澄ますと「チッチッチ!」と虫の鳴き声。季節の移り変わりを感じ取れる歌である。

入選    水科花奈子

〇開かない目冷たい手足姥の顔死出の旅立ち蓮華化生

(講評)人は命を授かった瞬間から、浮世の苦楽と向き合う。極楽浄土の蓮の台に委ねる。作者の感受性が非常にしなやかである。

佳作    岡本悠華

〇初体験髭剃り手伝いご褒美はチュッと素敵な投げキッス

(講評)口数が少ない利用者が、「ありがとう」の意を込めて投げかけてくれた瞬間。ユーモラスな作品に仕上がっている。


以上、選評   土永典明