2009年7月19日日曜日

平成21年 8月

入選  寺田理恵

〇親の出す介護疲れのため息は子どもの居場所奪うものなり

(講評)介護者を取り巻く家族に焦点を当てた作者の観察力の確かさを感じる。

入選  半間奈菜

〇久々に逢った曾祖母記憶なし優しさだけは前と変わらず

(講評)曾祖母の家を祖父と訪れた。曾祖母は家族の名前をすっかり忘れてしまっていたが、作者や祖父を気遣う優しさは以前のまま変わっていなかった。

入選  三浦加奈子

〇利用者と関わるたびに思うのは遠い施設の祖母の存在

(講評)施設実習で利用者と関わるたびに、遠方にいる祖母を想う作者である。

入選  品田麻衣

〇「がんばって」たった5文字の言葉でもそれが私の背中を押した

(講評)不安でいっぱいの初めての介護実習。そのような中、利用者や職員が励ましてくれた。

入選  金子広奈

〇初めての介護現場で立ち尽くす利用者さんが私の先生

(講評)車椅子介助でのトイレ誘導の場面である。とまどう作者に対して利用者が、どのように介助してほしいか説明してくれた。それが嬉しかった。

入選  石川順一

〇煩悩の夜は長くて我一人とても眠れず本を読むなり

(講評)いろいろと物思いに耽ると眠れぬ夜がある。そのような時には心静かに自分を見つめたり、本を取り出して読んでみようかなという気になる。

以上、選評  土永典明

平成21年 7月

入選  三浦加奈子

〇「先輩」と呼んでたはずが「先輩」と呼ばれる日々にいつしか変わる

(講評)上級生が卒業して下級生から「先輩」と声をかけられ、作者が上級生になったことを実感した。

入選  高椅美里

〇楽しみでうきうきだけど本当は不安でいっぱい初実習

(評価)介護実習の事前訪問に行き、オリエンテーションを受け施設見学してきた。学校へ帰ってくると、実習に行く楽しみとともに不安な気持ちもした作者である。

入選  齋藤加奈

〇黙々と訓練頑張るその背中尊敬します無理しないでね

(講評)利用者が歩行訓練している場面である。作者が「休憩しますか」と尋ねたが、利用者はリハビリを続けた。その姿に心うたれた。

入選  希弥

〇不器用な伝え方だと言うけれどしっかり私に届いています

(講評)初句の友達の言葉を結句でしっかりと受け止めている。作者の友への思いやりを感じる。

入選  古賀美貴子

〇生命の永さを誰が決めるのか納得のいく説明ほしい

(講評)ケアマネジャーである作者が、在宅での看取りをテーマに詠んだ連作である。終末期にある患者と最期まで向き合っている作者の呻吟が伝わってくる。

入選  石川順一

〇フリーズのパソコン画面アイコンが命令待ちととても思えぬ

(講評)面白い瞬間をとらえた。パソコン操作の経験からもよくあることである。

以上、選評  土永典明