入選 石津愛子
〇ドライブし車をぶつけ涙顔父は怒らず「怪我はないのか」
(講評)親の新車を借りドライブした作者は、誤って車をぶつけ後部の窓ガラスは全部割れ、ボディもへこんでしまった。家へ帰り父親にそのことを説明すると、「よくあることだよ。それより、怪我はなかったか」と作者を思いやってくれた。親の懐の深さと優しさに涙した作者であった。
入選 井上莉紗
〇ハムスター回し車を使わずに食っちゃ寝ばかりコロコロ太る
(講評)最近、ハムスターを飼った作者。よく観察すると回し車を使っていない。食べて寝る生活が日常になり、太ってきたようだ。
入選 佐藤直樹
〇春風の桜舞い散る花びらはユラリユラリと地に寄り添いぬ
(講評)少しの風で花びらが宙に舞いながら着地し、そこには桜の花びらの絨毯ができていた。桜が風によって落ちる様子を、作者はフォットジェニックに表現した。
入選 本間美知子
〇百歳の誕生日会祝う席「誰のことだね」二十歳と笑う
(講評)認知症により、失いたくない記憶を無くしてしまうのは何と悲しいことであろう。しかし時折、はっとするような正常な会話の時がある。そして、今を生きているその目は、青く澄み渡っているのである。作者のユーモアにより、新鮮な叙情や場面の幅がぐっと広がった。
以上、選評 土永典明