2008年3月16日日曜日

平成20年 4月

入選   五十嵐一仁

〇どの意味もとれる言葉の切れ端をつなぐと好きにならなくもない

(講評)アメリカンキルトのパッチワークのように、言葉の断片をつなぎ合わせることで、人間理解を深めたと言える。また、自分の視野が拡大したとも言える。

入選   和田綾子

〇恋愛を繰り返すたび問いかける好きになるのに理由はいるの

(講評)恋愛ときちんと向き合って、真摯に現状を掘り下げ考えようとしている。作者の生き方を彷彿とさせる情感がある。

佳作   今井裕加

〇「おねえちゃん素敵な笑顔大好きよ」この一言にもらった元気

(講評)介護者という利用者を支える者が、実は利用者の生きる姿に支えられていると感じた瞬間であった。

佳作   堀川恵理奈

〇さよならと手を振る君を思い出し戻らぬ日々の重さを知る

(講評)ともに語り、楽しい日々を過ごし合ったのちに去ってゆく「君」。その姿をずっと心の中で見送っている。そのさまが目に浮かび、今を見つめ直している作者である。

佳作   小林綾子   

〇自分がさなれたらいいなあの子にね無理だと知りつつ考えてみる

(講評)上の句の独り言的な発想表現、また「無理だと知りつつ」と心情を素直に肯定しようとする思いが、さり気なく出ている。

以上、選評  土永典明

2008年3月2日日曜日

平成20年 3月

入選   布施由里香

〇思い出す秋の夕日に照らされて言葉を紡ぐ君の横顔

(講評)漸く秋を身にまとった時、相手の言葉が想いとなって伝わってきたことを詠んだ歌である。下の句に余韻を残している。

入選   清水恵理

〇最後の日利用者さんと交わすのは「元気でいてね」と祈りの握手

(講評)ケアは狭義には「介護」を、広義には「世話」、「気にかかる」にまたがる意味をもっている。作者が、介護実習の最終日に利用者(高齢者)の居室を訪れ挨拶に行った。その瞬間、ケアという言葉が地平でとらえることができるようになった。「元気でいてね」という言葉が優しく響いている。

入選   希弥

〇何でかなコントロールが効かないの私の態度素直じゃないね

(講評)高校3年生の作品である。思春期には、目の前のものに目が向いてしまいがちである。群れを離れ、時には人と違う道を歩んでみると、興味の推移の盛り上がりが出てくることがある。作者は、何かの悩みにぶつかり、答えを見つけようとしている。その様子が描けている。

佳作   野口祐希

〇あの笑顔いつも近くで見てるのに自分の気持ちを伝えられない

(講評)身近になりすぎて相手に自分の本音を言えず、一歩踏み込めない作者である。二、三句に作者の純朴な人柄が出ている。

佳作   藤井春菜

〇思い出す海を見るたび故郷で過ごした時間大切な人

(講評)作者の故郷は、美しい自然と海岸線が続く佐渡である。故郷を恋しくなり涙することもあった。そのような時に思い出し、心を置くのは故郷の風景とそこで一緒に暮らす人々のことである。

以上、選評  土永典明