2011年12月4日日曜日

平成23年12月

入選   相田こず恵

〇「これ見てよ!」開いたページきらめいた家族の笑顔あなたの笑顔

(講評)利用者が部屋に招待してくれ、アルバムを見せてくれた。家族みんなが笑顔で写っていた。殺伐とした世相を想うとき、人は明るさを求める。

入選   倉石彩未

〇「会いたいよ」そう思っても会えなくて「僕も」の一言じっと待ってる

(講評)就職した彼とはメールや手紙で会話するが、やっぱり直接会って話がしたい作者である。

入選   石川順一

〇ハングルの短波放送夜を撤し我の心をほぐしていくか

(講評)韓国語のラジオ放送を必死になって聴いている作者の姿が目に浮かぶ。


以上、選評   土永典明

平成23年11月

入選   相田恵里

〇利用者の「夢をもって!」の一言に背中押された初実習

(講評)利用者に「あなたは若いんだから、夢をもって頑張りなさい!」と言ってもらったことが、嬉しかった作者である。

入選   石井玲衣名

〇さまざまな経験積んで成長し近づきたいな目標の人

(講評)介護実習に行き、目標となる職員を見つけた作者。少しでも近づくために、福祉の勉強をしていきたいことを結句で表現し得たといえる。

以上、選評   土永典明

2011年9月27日火曜日

平成23年10月

入選   相田恵里

〇初実習厳しい現場にあったのは教科書にない優しい言葉

(講評)実習の現場には教科書に書いていない、利用者や職員の優しい言葉と温かい触れ合いがあった。

入選   安達未紗季

〇驚いた濁点まじりあなたの声抱きしめられて始めて聞いた

(講評)作者が重症心身障害児施設へ実習に行った際、利用者に抱きしめられた。その時、今まで喋れないと思っていた利用者が発語した。それに感動した作者である。

以上、選評   土永典明

平成23年 9月

入選   金子穂波

〇玉入れで初めて見えた利用者のできないことを笑える強さ

(講評)普段は見えなかった利用者の表情が、レクリエーションの玉入れの時に見ることができた作者である。利用者は、玉を投げても全然届かないことを悲しいと思うのではなく、笑って楽しんでいた。

入選   河合麻奈美

〇「はっこいね!」私の片手包み込む小さな両手力がこもる

(講評)利用者が作者の冷たい左手を握り、温めるように包み込んでくれたのが嬉しかったのである。

入選   石川順一

〇金網に絡みつく葉を裏返す風が緑を黄緑色に

(講評)屋外でよく見かける風景を鮮やかに写し撮った、気持ちのいい歌である。


以上、選評   土永典明 

2011年8月21日日曜日

平成23年 8月

佳作   菅原美保

〇朝起きて目覚まし鳴って緊張感それでも行くよ実習先へ

(講評)目覚ましが鳴ると、実習に行かねばならないと思い、緊張感が高まった作者である。

佳作   星野拓也

〇「1、2、3」歩行介助をお手伝い掛け声そろえあともう少し

(講評)歩行訓練で利用者を支えながら一緒に歩いた作者。二人の声が廊下に響く。

以上、選評   土永典明

2011年7月10日日曜日

平成23年 7月

入選   石川順一

〇外国語日記に混ぜて習得を願う気持ちを持て余しけり

(講評)外国語に対するなじみ難さと、習得したい気持ちの捩れが魅力の歌になっている。

佳作   早川千夏

〇編み物を教えてくれたおばあちゃん二人で出来た小さなマフラー

(講評)特別養護老人ホームの実習に行き、利用者に編み物を習っている作者。下句の描写は何とも言えぬ優しさがこもっている。

佳作   渡辺鮎美

〇何度でも何でも聞くよ聞きたいなあなたが歩んだこれまでの道

(講評)高齢者に寄り添った作者の、しみじみとした思いが滲んでいる。


以上、選評   土永典明

2011年6月4日土曜日

平成23年 6月

入選   長谷川麻衣

〇最終日「お疲れさまね」と握手するその優しさに涙が溢れる

(講評)実習の最終日、利用者に「お世話になりました」と挨拶をしたら、握手をしてもらった。別れの寂しさに涙した作者であった。内容と表現に作者の情が息づいている。

入選   渡辺鮎美   

〇「ありがとう!」ただそれだけで元気出る今日も一日介護させてね

(講評)人生をあるがままに受け入れている利用者(高齢者)の一言は確かなものがある。豊かな心が通い合い作者の心の動きが読み取れる。

入選   石川順一

〇次々とスキルを合成していけばゲームに勝てるような気がして

(講評)洒落で且つ感慨を覚える巧い歌。身も心もリフレッシュして明日に備えたくなる。


以上、講評   土永典明

2011年5月8日日曜日

平成23年 5月

入選   田村裕里恵

〇名札見ずはじめて名前呼ばれたの些細な幸せ感じた瞬間

(講評)介護過程展開実習で行った二度目の施設で、利用者に名前を覚えてもらっていたのに嬉しかった作者である。

入選   長束有紀

〇「お姉ちゃん、何て読むの?その名前」毎回それが会話の始まり

(講評)認知症のため短期記憶が衰えている利用者が、作者の胸に貼り付けたネームタッグを見て、「この漢字なんて読むの?」と実習の日々問いかけてきた。それがいつも、利用者と作者との会話の始まりであった。

入選   石川順一

〇オンライン無料ゲームに凝りすぎて不眠の気味で事に臨めり

(講評)本当にそんな事ってありますね。ふっと元の状態に戻ったときが、さあ大変。


以上、選評   土永典明

2011年4月2日土曜日

平成23年 4月

入選   金岡春香

〇掌を見せ合うだけで笑顔咲く繰り返しでない介護の仕事

(講評)利用者との会話の中で、普段何気なく感じていることをこのように表現すると、ああそうだったと気づかされることが多いものである。

入選   品田麻衣

〇灰色に曇る気持ちを晴らすのは無垢で優しい笑みの温もり

(講評)灰色の感覚的把握はよい。下句の表現で「無垢で優しい笑みの温もり」がうまく強められ、この一首は、深く心にしみ入る歌になっている。

入選   菅原美保

〇「ありがとう!」今日も言われたこの言葉自信がつくよこれから先の

(講評)介護福祉実習で辛いことがあっても、利用者から毎日「ありがとう」と言われ続け、そのことで自分の将来をも見据えた作者であった。

入選   石川順一

〇残雪の雫の音が終日(ひねもす)し不安定期を脱しつつある

(講評)季節の移ろいを、その気温の変化に対して敏感に反応している。厳しい冬がその厳しき状況から抜け出す予感を鮮明に表現している。


以下、選評  土永典明


◇この度の東北地方太平洋沖地震の被害にあわれたみなさま方に、心よりお見舞い申し上げます。

2011年3月5日土曜日

平成23年 3月

佳作   小林幸子

〇自分の子 障害があるために離れて暮らす一つの家族

(講評)自分の幼い子供と離れて暮らす家族。その悲しそうな顔が忘れられない作者であった。

佳作   渡辺鮎美

〇お彼岸でお昼に寿司が出てきたら食事介助がいらなくなった。

実習施設で昼食時に寿司が出てきた。いつも食事介助が必要な利用者が、自分の手で寿司を何個もつかんで美味しそうに食べていた。

以上、選評   土永典明

2011年2月2日水曜日

平成23年 2月

佳作   細川紗希

〇大好きな祖母の笑顔を見たいからアイスクリーム片手に帰る

(講評)祖母が大好きなアイスクリームを買って帰る。祖母の笑顔を想像するだけで嬉しくなる作者である。

佳作   金子広奈

〇今日のレク アロマオイルで若返り手はつやつや顔はにこにこ

(講評)実習中、初めて担当したレクリエーションで、アロマ手浴をおこなった筆者である。フロア中、アロマオイルの良い香りで、利用者も笑顔の一日であった。

以上、選評   土永典明

◇三年連続で「平成22年度 NHK介護百人一首」に、新潟青陵短歌会から1名の方が入選されましたので歌を紹介いたします。

◎小林幸子

 手をつなぎ守ってくれたおばあちゃん次は私に手をつながせて

2011年1月14日金曜日

平成23年 1月

入選   五十嵐万穂

〇エプロンをつけただけで「ありがとう!」少しのことでも嬉しいと思う

(講評)昼食前に利用者の方に食事用のエプロンを着けてあげたとき、その利用者は笑顔で「ありがとう!」と言ってくれた。そのことが嬉しかった作者である。

入選   平松真実

〇「若いとき頑張ったって意味ないよ!」返す言葉が解らなかった

(講評)実習施設で張り切って実習していたら、利用者にこう言われて戸惑った作者である。この言葉には続きがあり、「歳をとればみんなただのお婆さんだよ!」と言われその言葉に作者が納得をした。

入選   河合麻奈美   

〇「また明日!」そう手を振って言われるとそれだけなのに嬉しくなった

(講評)実習3日目の作者が帰宅するときに利用者の方二人が、大きな声で手を振りながら見送ってくれたのが嬉しかった作者である。

以上、選評   土永典明

平成22年 12月

入選   鈴木映美佳

〇初実習緊張感から達成感変わる頃には寂しい別れ

(講評)やっと利用者の方と仲良くなれて嬉しかったのに、実習の最終日となり寂しさを感じている作者であった。

入選   川村明日香

〇少しずつ歩く姿は素晴らしいあなたのようになりたいと思う

(講評)利用者の歩行介助をしているときに、足が不自由であっても少しずつ前進しようとしている姿を見て感動した場面を詠っている。

入選   河合麻奈美

〇過去のこと悲しい顔で話してた何だか私も切なくなった

(講評)利用者の方と話していた時に、その方が自分の過去の悲しい思い出を作者に話して聞かせてくれた。作者自身も身につまされた。

以上、選評   土永典明