2009年3月30日月曜日

平成21年 4月

入選   三浦加奈子

〇帰り際寝床の祖母の手を握りまた来るからと強く念押す

(講評)作者は祖母の回復を祈る思いをもって手を握ったのであろう。

入選   渡邉彩   

〇「ありがとう」横を通ると手を合わせ拝んでくれる利用者さん

(講評)下句の「拝んでくれる利用者さん」の描写には、実習施設の利用者(高齢者)を労る作者の心情をおぼえる。

入選   池田明美   

〇利用者の笑顔を見るたび思い出す介護を目指した本当の理由

(講評)結句の視点の確かさが、この歌の印象を鮮明にしている。

入選   高橋かなえ

〇おしぼりの数だけ言われた「ありがとう」利用者の言葉心に染みた

(講評)作者の嬉しい心情を吐露することで、実習施設の利用者との和やかな様子が響いている。

以上、選評   土永典明

2009年3月2日月曜日

平成21年 3月 

入選   三浦加奈子

〇じわじわと祖母の背後に迫る影何もできない我が身を責める

(講評)作者が幼い頃、認知症になった祖母のことを詠った。作者をいつも可愛がってくれた祖母の豹変ぶりに驚くとともに、当時何もできなかった自分の無力さと悔しさを綴った。「何もできない」に寂しい情感がある。

入選   松尾幸恵

〇実習で毎日喋るおばあちゃんだけど今日も初めまして

(講評)数時間経過すると記憶をなくしている認知症の利用者(高齢者)に、向き合っている作者である。「初めまして」の組み合わせが、たいへん効果的である。

入選   寺田理恵   

〇何一つうまくできない私にも向けてくれたねあなたの笑顔

(講評)実習先の利用者の学生に対する労りの眼差しであろう。作者にとって、感謝の気持ちで過ごせた1日となった。

入選   高橋かなえ

〇入浴後普段と違う表情で「いい湯だった」と笑顔をくれた

(講評)実習先で利用者の入浴介助をしている時に詠った。「いい湯だった」の表現が、入浴後の爽快さを物語っている。

以上、選評   土永典明