2013年11月3日日曜日

平成25年11月

佳作    土田裟織

〇利用者と写真を撮って一言が似てる笑顔に親戚だねと

(講評)作者が利用者と一緒に写真を撮って現像した。その写真を二人で眺めたときのことを詠っている。

佳作    高野麻優

 〇利用者の口の開きで見て分かる好きな食べ物海苔天むすび

(講評)実習中、同じ利用者の食事介助をさせてもらうことで、その利用者の特徴を知ることができた作者であった。

佳作    横山麗菜

〇「これはソコ」教えてくれる利用者さんやっぱり私の大先輩

(講評)実習中に、どこにタオルがあるか分からずオロオロしていたら利用者が教えてくれた。それが嬉しかった作者であった。

以上、選評    土永典明

2013年9月27日金曜日

平成25年10月 

入選    水科花奈子

〇実習中視線を感じて振り返る笑顔で見守る祖父の姿

(講評)たまたまショートステイを利用していた祖父が、筆者の実習風景を後ろから見守るように眺めていた。筆者の心の動きを、シャッターチャンスで捉えた。

入選    木戸思鶴

〇食事中会話が弾み笑顔出る距離が縮まる老いと私

(講評)筆者が実習中に利用者と打ち解けた瞬間である。ほのぼのとした雰囲気が伝わる。

佳作    石田千春

〇聞き返し「ダメだね私」と老いの声伝わってくる歯がゆい気持ち

(講評)老いは生き字引である。物事に執着することも尊重すべきだが、忘却もまた大切な一つである。


以上、選評    土永典明

平成25年 9月

入選    高野麻優

〇散歩して夏の終わりを感じ取る澄んだ空気と虫の鳴き声

(講評)肌に感じる空気、耳を澄ますと「チッチッチ!」と虫の鳴き声。季節の移り変わりを感じ取れる歌である。

入選    水科花奈子

〇開かない目冷たい手足姥の顔死出の旅立ち蓮華化生

(講評)人は命を授かった瞬間から、浮世の苦楽と向き合う。極楽浄土の蓮の台に委ねる。作者の感受性が非常にしなやかである。

佳作    岡本悠華

〇初体験髭剃り手伝いご褒美はチュッと素敵な投げキッス

(講評)口数が少ない利用者が、「ありがとう」の意を込めて投げかけてくれた瞬間。ユーモラスな作品に仕上がっている。


以上、選評   土永典明      

2013年8月6日火曜日

平成25年 8月

入選    丸山彩

〇「へっちゃらよ!リハビリなんてへっちゃらよ!」会いに来る孫パワーの源

(講評)孫が面会に来てくれることを、リハビリの励みとしている利用者。その姿に感動した作者であった。

入選    田村香成

〇担当者厳しい時もあるけれどその背面は理想の姿

(講評)実習中に指導者から介護を基礎から学んだ。特に利用者と関わっている姿を見たとき、将来自分もこのような指導者を目指したいと思った作者であった。

入選    桐生歩美

〇車椅子一生懸命漕ぎながらいつも私と話してくれる

(講評)他の利用者と会話をしていても、いつも車椅子を漕いで作者の側まで来て、話の輪に入ってくれる利用者。そのことが嬉しかった。

以上、選評   土永典明

2013年7月5日金曜日

平成25年 7月

入選    田村香成

〇テレビ観て地元が映り笑みこぼれおっちゃんたちええ人だっちゃ

(講評)一人暮らししている作者がテレビをつけたら、佐渡の父親や近所の人が出演していた。方言丸出しで会話していて、その優しさに触れる思いであった。

入選   中谷紗央理

〇週二回シーツ交換の楽しみは職員さんたちとのぶっちゃけトーク

(講評)位置関係の不問が気をそそる。

入選   幡本梨紗

(講評)うちの犬自分のいびきで飛び起きてびっくりするがまた寝始める

(講評)着想が面白く楽しい表現の仕方。

以上、選評   土永典明

2013年5月24日金曜日

平成25年 6月

入選   苅部夏海

〇大声で鼻歌うたい上機嫌ふと見上げれば窓開いており

(講評)予想もしていなかった窓の全開。読むと思わず笑ってしまう、ユーモアのある歌。

入選   和田あかり

〇弁当の中身にいつも一工夫母の愛情パワーにかえる

(講評)実習中は特に弁当の副食に気を配ってくれる母親。この弁当で一日、実習を乗り越えられる。

入選   岡本大地

〇十九歳子ども扱い嫌だけど大人なんかになりたくはない

(講評)一首全体から発する若々しい勢いが気持ちよく伝わってくる。


以上、選評   土永典明

平成25年 5月

入選   伊倉瑠瞳

〇「ありがとう」面と向かって言えないが母の日だけは素直になろう

(講評)本学入学時より、アパートで一人暮らしをしている作者。親元を離れてみて親のありがたみがわかり、母の日に言葉にしてみた。

入選   苅部夏海

〇歩行器についた鈴の音歩むたびちりちり揺れる頼りなさげに

(講評)作者の実習でのなんでもない事柄を、こうして意識下において見ている。観察眼が素晴らしい。

入選   高野麻優

〇春の朝目覚ましなしで目を開ける澄んだ天気と鳥のさえずり

(講評)春になるにつれて暖かくなり、鳥の鳴き声で目覚めのいい朝を迎えさせてくれる。一度読んだだけで場面が見えてくる印象的な歌。


以上、選評   土永典明