2010年11月17日水曜日

平成22年 11月

入選   相田こず恵

〇失敗で流す涙も悔しさもあなたの笑顔で乗り越えられる

(講評)介護実習で失敗して悔しいと思って泣いた日も、利用者の笑顔を見て元気をもらった作者であった。

入選   鈴木映美佳

〇一日で四人の祖父母できました孫になってと嬉しい言葉

(講評)実習中に利用者のみなさんから、「あなたは私の孫にそっくりだ」と言われ嬉しく感じた作者であった。


以上、選評   土永典明   

2010年10月18日月曜日

平成22年 10月

入選   品田麻衣

〇「また来てね!」小さな体で背伸びして大きく手を振るまぶしい笑顔

(講評)高齢者施設の食堂で、一生懸命手伝いをしている利用者に声を掛けられた作者。その人は小柄だが、手を振って笑顔の溢れた姿を見て励まされた。

入選   安達未紗季

〇「頑張って!」その一言が嬉しくて涙流して深く頷く

(講評)特別養護老人ホームの実習で利用者と話しをした。その利用者に涙ながらに「頑張って!」と言われ、それにつられて涙を流した作者であった。


以上、選評   土永典明

*今年も新潟青陵大学・新潟青陵短期大学部の青空祭が10月16日(土)・17日(日)の両日に開催され、地域交流作品展に新潟青陵短歌会からも短歌を出展しました。人間総合学科の安達未紗季さんが理事長賞を授与されましたので報告します。

2010年9月2日木曜日

平成22年 9月

入選   山本大祐

〇「へーんしん!」しゃべれなくとも伝わった利用者のするライダーポーズ

(講評)言語障害でしゃべることができない利用者が、麻痺のある体で必死にライダーポーズを再現していた。その光景がとても印象的であった。

入選   高椅美里

〇「昔はね……」私の姿で思い出す忘れかけてた学生時代

(講評)実習生である筆者の姿と、自分の学生時代とを重ね合わせた利用者であった。

入選   長束有紀

〇「来たかや!」と行くたび頭撫でてくる「俺にも娘欲しかったな!」と

(講評)実習中に夫婦部屋で生活する夫婦に出会った。筆者が夫に話しに行くと、その夫婦には4人の息子がいたことがわかった。夫が「娘が欲しかった!」と笑顔で筆者に関わってくれた。

入選   田村裕里恵

〇「支え合い大切だよ!」と利用者に言われて気づく周りの存在

(講評)実習中に利用者が、「支え合いは大切だよ!」と言った一言が筆者の印象に残った。

以上、選評   土永典明

2010年8月8日日曜日

平成22年 8月

入選   小林幸子

〇手をつなぎ守ってくれたおばあちゃん次は私に手をつながせて

(講評)筆者が幼い頃より道路を渡るときには、手をつないで守ってくれた祖母。現在は祖母のほうが車にひかれそうになり、ひやひやしている筆者である。この歌からは祖母を労る孫の優しさが伝わってくる。

入選   菅原美保

〇利用者は同い年の男の子愛情込めてだっこをした

(講評)重症心身障害児施設での実習体験を詠っている。このスキンシップの実践は、利用者を受容するために自然と出たところがよい。

入選   早川千夏

〇小さな手なのにとっても温かい命の重みここで知る

(講評)重症心身障害児施設での実習体験を詠っている。障害のため発語ができない子ども。しかし、手をつないだときに、この子が一生懸命に生きようとしている様子が筆者に伝わってきたのである。

入選   山本大祐

〇「お兄ちゃんトイレ連れてって!」そう呼ばれ5分ごとにトイレへ向かう

(講評)身体障害者療護施設での実習体験を詠っている。5分ごとに利用者に呼ばれトイレ誘導する筆者である。利用者に対して徹底受容と理解を基礎において、じっくり関わることも大切である。この歌から、利用者が自分の存在を大切にしてくれる人を求めていることが理解できる。

以上、選評   土永典明

2010年7月27日火曜日

平成22年 7月

佳作   山崎恵美

〇利用者の言葉ではなく表情で伝わってきたあなたの気持ち

(講評)実習風景を素直に詠っていて好感が持てる。ケアする者の喜びが溢れている。

佳作   土田美沙恵

〇利用者の昔話に聴き入って自分自身も涙を流す

(講評)高齢者の生き方は手本であったり、反面教師であったりする。利用者への尊敬が窺える。

以上、選評   土永典明

2010年6月3日木曜日

平成22年 6月

佳作   半間奈菜

〇実習で泣いた後には微笑みが成長できた自分の姿

(講評)介護実習をやり終えた充実感と、利用者への感謝の気持ちを詠った。

佳作   庭野瞳

〇モノクロの映画観ていて懐かしむ「昔も観たの!」と思いで語る

(講評)人の別れ、季節の移り変わりなど、モノクロの映画は深い余情を残す。

佳作   松澤美佳

〇この前は元気にしていたお爺ちゃんいないと聞いて悲しくなった

(講評)この世に生を受けた以上避けられぬ生老病死。


以上、選評   土永典明

2010年5月5日水曜日

平成22年 5月

佳作   山本大祐

〇「実習はあと何日?」と聞いてくる利用者さんに嬉し泣き

(講評)拘わりもわだかりも廃した作者の心に、利用者の一言が青い風となって吹き抜けた。

佳作   半間奈菜

〇忘れない彼と出会ったあの場所をいつか伝える私の気持ち

(講評)恋を遠回りして、下手な生き方をする作者と人は言うかもしれない。しかし、安心感を漂わせて、利口かもしれない回り道とも言える。

佳作   渡辺未来

〇おじいさん最後の言葉グッときた「寂しくなるから見送らないで」

(講評)実習最終日、しばし立ち止まって利用者の声に耳を傾ける作者であった。

移乗、選評   土永典明

2010年4月6日火曜日

平成22年 4月

佳作   吉田加代

〇今日もまた洗濯物が乾くのを今か今かと待たれるあなた

(講評)下句に、おのずから表白されている作者の深く優しい愛情が、心に止まる一首である。

佳作   三浦加奈子

〇利用者のそばに寄り添い手を握る触れた伝わる人の温もり

(講評)利用者に喜んでもらおうとする学生の気持ちが痛切に伝わる。

佳作   阿部怜美

〇最後まで私を見送るお婆さんの切ない笑顔に我が胸痛む

(講評)学生が利用者をいとおしむ姿が表現されている。「切ない笑顔に」に老婆の心情がにじみでている。

以上、選評   土永典明

2010年3月17日水曜日

平成22年 3月

佳作   布施由里香

〇「サンキュー!」と目尻を垂らすVサイン私も真似るあなたのように

(講評)介護実習で利用者と過ごした一コマである。上句から下句にかけてシャープな表現で、ユーモアに詠った。

佳作   堀川恵里奈   

〇真っ白い蜜柑の筋を全部取り「きれいになった!」と私の自慢

(講評)実体験を自分の言葉で表現しているのが良く、情景が目に見えるようだ。

佳作   北川夏樹

〇おばあちゃんいつも笑顔をありがとう絶対なるぞ介護福祉士

(講評)卒業後の就職選択に作者は悩んでいたが、今回の実習で迷いから覚めてきっぱりと心を決めた。

佳作   古賀美貴子

〇ピカピカの制服姿誇らしげ子の進学にホッと一息

(講評)我が子の可愛さだけではなく、下句の子の成長を確と受け止めている。

以上、選評    土永典明

2010年1月30日土曜日

平成22年 2月

入選   希弥

〇丸い背をさする片手に気持ち込め私なりのコミュニケーション

(講評)看護実習で円背の高齢者の患者とかかわった作者である。三句の「気持ち込め」が優しく響いている。

佳作   長谷川侑美

〇「何してた?」必ず聞くよお父さん私が友と遊んだ日には

(講評)父と娘との距離感と温度差。父親は娘に対して、不器用さと間違った思いこみが災いして、娘と向き合えないことがある。父親の娘への心遣いがわかってもらえるのは、娘が就職した時なのか、それとも結婚した時であろうか。

佳作   土田美沙恵

〇これからは利用者さんの立場から考え方を変えてかかわる

(講評)今回の介護実習では、認知症の利用者とのかかわる難しさを感じた作者である。また、認知症の利用者の世界に自分自身が身を置くことを学んだ実習でもあった。

佳作   金岡春香

〇「ありがとう」未熟な私に絶大な勇気をくれたやさしい瞳

(講評)介護実習で利用者の介護がうまくできず、利用者に負担をかけてしまった時にも、その利用者は感謝してくれた。優しく「ありがとう」と言ってもらったことで、実習の真の目的を悟った作者である。

以上、選評  土永典明