2010年1月30日土曜日

平成22年 2月

入選   希弥

〇丸い背をさする片手に気持ち込め私なりのコミュニケーション

(講評)看護実習で円背の高齢者の患者とかかわった作者である。三句の「気持ち込め」が優しく響いている。

佳作   長谷川侑美

〇「何してた?」必ず聞くよお父さん私が友と遊んだ日には

(講評)父と娘との距離感と温度差。父親は娘に対して、不器用さと間違った思いこみが災いして、娘と向き合えないことがある。父親の娘への心遣いがわかってもらえるのは、娘が就職した時なのか、それとも結婚した時であろうか。

佳作   土田美沙恵

〇これからは利用者さんの立場から考え方を変えてかかわる

(講評)今回の介護実習では、認知症の利用者とのかかわる難しさを感じた作者である。また、認知症の利用者の世界に自分自身が身を置くことを学んだ実習でもあった。

佳作   金岡春香

〇「ありがとう」未熟な私に絶大な勇気をくれたやさしい瞳

(講評)介護実習で利用者の介護がうまくできず、利用者に負担をかけてしまった時にも、その利用者は感謝してくれた。優しく「ありがとう」と言ってもらったことで、実習の真の目的を悟った作者である。

以上、選評  土永典明

2009年12月19日土曜日

平成22年 1月

入選   金子広奈

〇利用者のニコッと笑うその顔にいつも元気を貰っています

(講評)介護実習中に笑顔をくれる利用者の存在が、作者にとってどれほど有り難いことか。利用者への感謝の気持ちが、こんな表現で歌になった。

入選   品田麻衣

〇「独身か?」笑顔で言った利用者さん100歳超えてもまだまだいける!?

(講評)この100歳を超えた利用者の人生において、困難や辛苦に耐えた長い道のりがあったはず。今その結果、この利用者の生き方にユーモアとゆとりを持った姿勢が、鮮明に浮かんでくる。

入選   希弥

〇紙風船いい音鳴らし叩き合う幼き頃の姿に戻り

(講評)看護病院実習での、認知症高齢者のレクリエーション風景が窺える。高齢者らが紙風船を叩いた視線は、目から心へ戻ってきたであろう。作者が詠った下の句に、その心の動きが見て取れる。

入選   石川順一

〇校正の仕事に就けば展望が開けると思う大人の今も

(講評)作者のこの夢の若さは貴重である。駆け引きのない正直な作者の夢。きっと、素敵な目標は叶うであろう。

以下、選評   土永典明

◇新年のお慶びを申し上げます。寒さはまだまだこれからと、気を引き締めているところでございます。
さて昨年に引き続き、「平成21年度 NHK介護百人一首」に、新潟青陵短歌会から2名の方が入選されましたので歌を紹介いたします。

◎ 小林舞衣

  嫌いだと面と向かって言われたがその一言がやる気を出させた

◎ 希弥

  紙風船いい音鳴らし叩き合う幼き頃の姿に戻り

2009年11月23日月曜日

平成21年12月

入選   田村裕里恵

〇利用者の「おめさん好きだ!」一言を聞いて私も笑顔溢れる

(講評)利用者の笑顔で言ってくれた言葉が嬉しくて、作者も自然と笑顔が溢れてきた。歌らしく構えて作ろうとせず、伸びやかに自然に言葉が出ているのがいい。

入選   長谷川侑美

〇最終日利用者さんに「長谷川さん!」やっと呼ばれた私の名前

(講評)作者は介護基礎実習で、利用者から「実習生さん」とか「あなた」としか呼ばれず、寂しい思いをしていた。実習の最終日に初めてその利用者が、何度も作者の名前を呼んでくれた。互いに名前で呼び合う関係というのは、喜びを何倍にもする。

入選   細川紗希

〇利用者の私の名を呼ぶ声が聞こえる度に親近感増す

(講評)前回の実習では、作者が話しかけても返事をしてくれない利用者いた。今回同じ施設に実習に行き、その利用者は何度も作者の名前を呼んでくれるようになった。それが嬉しかった作者である。

入選   山本大祐

〇手を出すと握ってくれる利用者さんつい嬉しくて会うたび握手

(講評)作者が手を出すと必ず握手してくれる利用者がいたので、毎日手を握りかえした。結句に作者の高齢者に対する愛情がにじみでている。

以上、選評   土永典明

2009年10月29日木曜日

平成21年11月

入選    金子広奈

〇利用者の心をギュッと掴み取るそんな介護を私はしたい

(講評)実習指導者と利用者の関係性が物語性を呈する。このような二者の信頼関係を優しく見つめている作者の生き方が窺える。

入選    小林幸子

〇「よいしょ」と自分の体動かして自分が生きた足跡残す

(講評)結句への飛躍がよい。利用者が毎日を力強く生きている様が感じられる。

入選    佐藤竜馬

〇実習で初の仕事を体験し戸惑いながらやり遂げた午後

(講評)一時の実習体験を詠っている。作者の心の動きが想像できる。

入選    品田麻衣

〇「いい名前!」言われて初めて好きになるそんなあなたが一番素敵

(講評)利用者が投げかけてくれた言葉が、どれだけありがたいことか。利用者への感謝の気持ちが伝わる1首である。

以上、選評   土永典明

*今年も新潟青陵大学・新潟青陵短期大学部の青空祭が10月17日(土)・18日(日)の両日に開催され、地域交流作品展に新潟青陵短歌会からも短歌を出展しました。人間総合学科の三膳春香さんが学長賞を授与されましたので報告します。

◎三膳春香

 「いいんだよ頑張ってるから」そう言われ何故か止まらぬ私の涙   

2009年9月23日水曜日

平成21年10月

入選   渡辺鮎美

〇勉強をしている自分の姿みて成長したと思うこの頃

(講評)高校の頃まで勉強嫌いであった作者が、短大の専門科目で出た課題に真剣に取り組んでいる自分の姿に成長を感じた。

入選   三膳春香

〇「いいんだよ、頑張ってるから」そう言われ何故か止まらぬ私の涙

(講評)作者が初めての実習で失敗して利用者に謝罪し、利用者からこのような言葉が返ってきた。利用者に思いが通じたことが嬉しく、また優しさに感激した。

入選   長束有紀

〇いろいろと頼ってくれた利用者さん力不足でごめんなさい

(講評)初めての実習で利用者の言葉が理解できず、悔しくて申し訳ない気持ちを歌っている。

入選   長谷川侑美

〇利用者の手に触れてみて思ったよ皺の数は優しさの数

(講評)実習で利用者の手に触れたとき、その皺の多さにこのように感じて歌にした。

以上、選評  土永典明

2009年8月23日日曜日

平成21年 9月

入選   金岡春香

〇日本海遠くに見えるは佐渡島朱鷺の羽ばたき羨ましくて

(講評)作者の故郷は佐渡である。本学に入学するにあたって新潟市内で一人暮らしをしている。新潟の海岸線から佐渡を見ていると、自分が朱鷺なら好きな時に飛んで佐渡へ帰れると思った。

入選   長尾理菜

〇利用者と目と目が合うと微笑んで私も返す満点の笑み

(講評)実習生として高齢者施設の利用者とかかわった作者である。非言語的なコミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)による小さなかかわりが、大きな喜びに繋がった瞬間であった。

入選   高椅かなえ

〇最終日初めて笑った利用者の笑顔忘れず介護士目指す

(講評)実習中に笑ったことがなかった利用者が、実習最終日の口腔ケアを終えたところで初めて笑ってくれた。それが何より嬉しくて、励みの糧として結句の「介護士目指す」が響き伝わってくる。

入選   吉田加代

〇「また明日」介護実習最終日言われた言葉寂しくなった

(講評)実習最終日に重度の認知症を有する利用者から「また明日」と言われた。作者はそのことが嬉しいのだが、もう会う機会がないのかと思うと寂しくなった。利用者を思う作者の目は深くやさしい。

入選   石川順一

〇ボージョレーヌーヴォーワイングラス付きコンビニで買う11月末

(講評)「コンビニで買う」とは言い得て妙。ひとときの体験を歌にするのは楽しいし、日常の中にいくらでも短歌は見いだせる。


以上、選評  土永典明

2009年7月19日日曜日

平成21年 8月

入選  寺田理恵

〇親の出す介護疲れのため息は子どもの居場所奪うものなり

(講評)介護者を取り巻く家族に焦点を当てた作者の観察力の確かさを感じる。

入選  半間奈菜

〇久々に逢った曾祖母記憶なし優しさだけは前と変わらず

(講評)曾祖母の家を祖父と訪れた。曾祖母は家族の名前をすっかり忘れてしまっていたが、作者や祖父を気遣う優しさは以前のまま変わっていなかった。

入選  三浦加奈子

〇利用者と関わるたびに思うのは遠い施設の祖母の存在

(講評)施設実習で利用者と関わるたびに、遠方にいる祖母を想う作者である。

入選  品田麻衣

〇「がんばって」たった5文字の言葉でもそれが私の背中を押した

(講評)不安でいっぱいの初めての介護実習。そのような中、利用者や職員が励ましてくれた。

入選  金子広奈

〇初めての介護現場で立ち尽くす利用者さんが私の先生

(講評)車椅子介助でのトイレ誘導の場面である。とまどう作者に対して利用者が、どのように介助してほしいか説明してくれた。それが嬉しかった。

入選  石川順一

〇煩悩の夜は長くて我一人とても眠れず本を読むなり

(講評)いろいろと物思いに耽ると眠れぬ夜がある。そのような時には心静かに自分を見つめたり、本を取り出して読んでみようかなという気になる。

以上、選評  土永典明