2008年3月2日日曜日

平成20年 3月

入選   布施由里香

〇思い出す秋の夕日に照らされて言葉を紡ぐ君の横顔

(講評)漸く秋を身にまとった時、相手の言葉が想いとなって伝わってきたことを詠んだ歌である。下の句に余韻を残している。

入選   清水恵理

〇最後の日利用者さんと交わすのは「元気でいてね」と祈りの握手

(講評)ケアは狭義には「介護」を、広義には「世話」、「気にかかる」にまたがる意味をもっている。作者が、介護実習の最終日に利用者(高齢者)の居室を訪れ挨拶に行った。その瞬間、ケアという言葉が地平でとらえることができるようになった。「元気でいてね」という言葉が優しく響いている。

入選   希弥

〇何でかなコントロールが効かないの私の態度素直じゃないね

(講評)高校3年生の作品である。思春期には、目の前のものに目が向いてしまいがちである。群れを離れ、時には人と違う道を歩んでみると、興味の推移の盛り上がりが出てくることがある。作者は、何かの悩みにぶつかり、答えを見つけようとしている。その様子が描けている。

佳作   野口祐希

〇あの笑顔いつも近くで見てるのに自分の気持ちを伝えられない

(講評)身近になりすぎて相手に自分の本音を言えず、一歩踏み込めない作者である。二、三句に作者の純朴な人柄が出ている。

佳作   藤井春菜

〇思い出す海を見るたび故郷で過ごした時間大切な人

(講評)作者の故郷は、美しい自然と海岸線が続く佐渡である。故郷を恋しくなり涙することもあった。そのような時に思い出し、心を置くのは故郷の風景とそこで一緒に暮らす人々のことである。

以上、選評  土永典明  

1 件のコメント:

とら さんのコメント...

希弥さんの短歌に「何でかなコントロールが効かないの」とあるが、自分の心情を隠すことなく吐露できるその感性のみずみずしさに心打たれる。