2009年2月4日水曜日

平成21年 2月

入選   大泉千夏

〇小さな手一生懸命毛糸編むモコモコあったか真っ赤な膝掛け

(講評)利用者(実習先のお年寄り)への敬愛の尊さがほのぼのと伝わる。手編みの尊さもある。「モコモコあったか」に「真っ赤な」と続けたのがよく効いている。

入選   寺田理恵

〇見上げれば宙(そら)が広がりちっぽけな自分の存在確認できる

(講評)地球は多くの生命を育む、かけがえのない宇宙の星である。辛いことがあっても宇宙に目をやることで、生まれてきたことの大切さを感じる。その時、自分の悩みがちっぽけであることを悟った作者である。尊い命を大事にしたい。

入選   阿部怜美
   
〇夏みどり秋は黄金の波うねる田に囲まれた私の田舎

(講評)上句の「夏みどり秋は黄金の波うねる」は、たいへん印象的な情景にしている。また、視覚を詠っていて巧い。さらに結句の「私の田舎」には、ほおえましい情感をおぼえる。

入選   三浦加奈子

〇「またおいで」怒鳴るばかりのあの人が最後にくれた優しい言葉

(講評)施設実習で、最初は怒鳴ってばかりいた利用者が実習最終日には優しく接してくれた。作者が利用者を思い浮かべながら、その実感が伝わってくる。

入選   加藤夏基   
   
〇お早うと陽射しをくれる人がいる寂しい影も消え晴れるかな

(講評)グループホーム実習で、最初はとても不安そうにしていた利用者が、実習生の関わりで笑顔が見られるようになってきた。上句の「お早うと陽射しをくれる人がいる」は、利用者の安堵感が爽やかに伝わってくる。

入選   小林綾子

〇笑ってるあなたの笑顔が好きだけどたまにはいいよ困った顔も

(講評)実習先の利用者の優しく笑った眼差しは慈愛に満ちていた。利用者を慈しみ眺めている作者が、上句に自ずとあらわれている。

入選   寺尾圭子

〇利用者の笑顔を見るとキュンとなるしわ一つひとつ愛おしくて

(講評)実習で辛いことがあっても、利用者のしわになる笑顔を見ると癒され、また頑張ろうと思った作者である。介護実習では、利用者から学ぶことが何と多いことか。

以上、選評   土永典明 

     

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

三浦さんの短歌

 怒鳴ってばかりいた利用者さんが優しい言葉を最後にかけてくださるなんて本当にうれしいですね。きっと三浦さんが一生懸命実習にとりくんでいたからだと思います。

ケアマネさん さんのコメント...

梅澤さん、私の祖母も90歳を過ぎていますが編み物大好きです。高齢者の楽しみや生きがいを共にさがすことも介護福祉士の大切な役割ですね。