2009年5月29日金曜日

平成21年 6月

佳作   吉田加代

〇初めてのデイサービスであれこれと新たに気付いた介護の形

(講評)生活施設と通所介護の違い、利用者の方の身体状況等の違いなどをデイサービスの実習で感じた作者である。

佳作   大桃雅俊   

〇「待ってるね」言葉の意味に込められた利用者願うここへ就職

(講評)実習の最終日に、利用者から言われた嬉しい言葉である。職員の方で、この利用者の方からやはりそう言われ、実際にこの実習施設に就職をされたそうである。

佳作   川崎恵

〇東京と我が家を繋ぐ電話線 目には見えない心の絆

(講評)父親が単身赴任で家族が揃うことが少ない。しかし毎日、父親が電話をかけてきて、家族一人ひとりと日常の話しをしている。電話が家族の絆になっているのである。

以上、選評  土永典明

2009年4月28日火曜日

平成21年 5月

入選   小林舞衣

〇嫌いだと面と向かって言われたがその一言がやる気を出させた

(講評)嫌いだと言った利用者に、褒めてもらえるケアをしようと実習中に決意した作者である。

佳作   間口知美

〇気がつけば利用者と一緒に水戸黄門釘付けになる自分がいる

(講評)真剣な眼差しでテレビドラマを観ている利用者。実習生の作者も一緒になってテレビに見入ってしまった。

佳作   庭野瞳

〇支えあい助けあってる利用者さん施設でみられた優しい情景

(講評)施設で困っている利用者に対して、別の利用者が手を貸していた。それに感激した作者である。
心が和む。

佳作   三浦加奈子   

〇喧嘩して泣いて騒いで怒られて笑いが絶えぬ私の家族

(講評)家族間の日常生活が垣間見える。「笑いが絶えぬ」ことこそ、日々和やかな家族とのコミュニケーションの賜である。

以上、選評  土永典明

  

2009年3月30日月曜日

平成21年 4月

入選   三浦加奈子

〇帰り際寝床の祖母の手を握りまた来るからと強く念押す

(講評)作者は祖母の回復を祈る思いをもって手を握ったのであろう。

入選   渡邉彩   

〇「ありがとう」横を通ると手を合わせ拝んでくれる利用者さん

(講評)下句の「拝んでくれる利用者さん」の描写には、実習施設の利用者(高齢者)を労る作者の心情をおぼえる。

入選   池田明美   

〇利用者の笑顔を見るたび思い出す介護を目指した本当の理由

(講評)結句の視点の確かさが、この歌の印象を鮮明にしている。

入選   高橋かなえ

〇おしぼりの数だけ言われた「ありがとう」利用者の言葉心に染みた

(講評)作者の嬉しい心情を吐露することで、実習施設の利用者との和やかな様子が響いている。

以上、選評   土永典明

2009年3月2日月曜日

平成21年 3月 

入選   三浦加奈子

〇じわじわと祖母の背後に迫る影何もできない我が身を責める

(講評)作者が幼い頃、認知症になった祖母のことを詠った。作者をいつも可愛がってくれた祖母の豹変ぶりに驚くとともに、当時何もできなかった自分の無力さと悔しさを綴った。「何もできない」に寂しい情感がある。

入選   松尾幸恵

〇実習で毎日喋るおばあちゃんだけど今日も初めまして

(講評)数時間経過すると記憶をなくしている認知症の利用者(高齢者)に、向き合っている作者である。「初めまして」の組み合わせが、たいへん効果的である。

入選   寺田理恵   

〇何一つうまくできない私にも向けてくれたねあなたの笑顔

(講評)実習先の利用者の学生に対する労りの眼差しであろう。作者にとって、感謝の気持ちで過ごせた1日となった。

入選   高橋かなえ

〇入浴後普段と違う表情で「いい湯だった」と笑顔をくれた

(講評)実習先で利用者の入浴介助をしている時に詠った。「いい湯だった」の表現が、入浴後の爽快さを物語っている。

以上、選評   土永典明

2009年2月4日水曜日

平成21年 2月

入選   大泉千夏

〇小さな手一生懸命毛糸編むモコモコあったか真っ赤な膝掛け

(講評)利用者(実習先のお年寄り)への敬愛の尊さがほのぼのと伝わる。手編みの尊さもある。「モコモコあったか」に「真っ赤な」と続けたのがよく効いている。

入選   寺田理恵

〇見上げれば宙(そら)が広がりちっぽけな自分の存在確認できる

(講評)地球は多くの生命を育む、かけがえのない宇宙の星である。辛いことがあっても宇宙に目をやることで、生まれてきたことの大切さを感じる。その時、自分の悩みがちっぽけであることを悟った作者である。尊い命を大事にしたい。

入選   阿部怜美
   
〇夏みどり秋は黄金の波うねる田に囲まれた私の田舎

(講評)上句の「夏みどり秋は黄金の波うねる」は、たいへん印象的な情景にしている。また、視覚を詠っていて巧い。さらに結句の「私の田舎」には、ほおえましい情感をおぼえる。

入選   三浦加奈子

〇「またおいで」怒鳴るばかりのあの人が最後にくれた優しい言葉

(講評)施設実習で、最初は怒鳴ってばかりいた利用者が実習最終日には優しく接してくれた。作者が利用者を思い浮かべながら、その実感が伝わってくる。

入選   加藤夏基   
   
〇お早うと陽射しをくれる人がいる寂しい影も消え晴れるかな

(講評)グループホーム実習で、最初はとても不安そうにしていた利用者が、実習生の関わりで笑顔が見られるようになってきた。上句の「お早うと陽射しをくれる人がいる」は、利用者の安堵感が爽やかに伝わってくる。

入選   小林綾子

〇笑ってるあなたの笑顔が好きだけどたまにはいいよ困った顔も

(講評)実習先の利用者の優しく笑った眼差しは慈愛に満ちていた。利用者を慈しみ眺めている作者が、上句に自ずとあらわれている。

入選   寺尾圭子

〇利用者の笑顔を見るとキュンとなるしわ一つひとつ愛おしくて

(講評)実習で辛いことがあっても、利用者のしわになる笑顔を見ると癒され、また頑張ろうと思った作者である。介護実習では、利用者から学ぶことが何と多いことか。

以上、選評   土永典明 

     

2009年1月13日火曜日

平成21年 1月

入選   倉田陽介

〇何をするやりたいことも分からずに戸惑いながら答えを探す

(講評)学生生活も就職するまでのタイムリミットに差し掛かった。就職を一般企業にするか介護にするか作者は随分迷った。その決断に要する時間の流れをうまくとらえている。

入選   庭野瞳

〇久々に家に帰ると聞こえくる家中広がる温かな声

(講評)久し振りに故郷に戻ったとき、家族の団らんが懐かしくもあり嬉しかった作者である。

入選   山辺密蜂

〇やがて来る落ち葉の時わが身にも生きた証は何も残らず

(講評)再度、闘病生活を続けておられる作者である。「落ち葉の時」で作者の心の動きが端的に表現されている。ご回復をお祈りいたします。

入選   希弥

〇気がつけば与えるはずの微笑みを貰っていたんだあなたにいつも

(講評)作者にとって初めての看護実習。看護師と患者との川の流れに添うような人間関係。無力感を感じたが、お互いによい思い出となる実習ができたようである。

入選   古賀美貴子

〇看護師とケアマネジャー仕事でも別れの時は考えず来る

(講評)看護師兼ケアマネジャーとして勤務されている作者である。在宅のターミナルケアで亡くなった利用者を思い浮かべながら、その実感が伝わってくる。

佳作   石川順一

〇朝食のサンドイッチはどうしてもサンドウイッチと言いたくなりて

(講評)外来語を使って、ちょっととぼけた味のある作品である。

佳作   堀井雅之

〇「ありがとう」その一言が嬉しくてだから目指すよ介護福祉士

(講評)人との接し方は多種多様だが、まずは相手を思いやることが大切である。

佳作   上田亮太

〇実習で学んだ多くの事だけが自分にとっての大きな自信

(講評)月日が経つと介護実習での悲喜の記憶は、楽しくやりがいのあるものとなった。

以下、選評  土永典明

◇新年のお慶びを申し上げます。寒さはまだまだこれからと、気を引き締めているところでございます。
さて、「平成20年度 NHK介護百人一首」に、新潟青陵短歌会からは2名入選しました。新潟青陵大学短期大学部人間総合学科介護福祉コース2年の増井美佳さんと、同1年の小柳知栄美さんです。7,495首の中から選定された歌を紹介します。なお、NHK福祉ネットワークスペシャル「NHK 介護百人一首」2009作品紹介(NHK福祉キャンペーン ハート・プロジエクト)に掲載されています。2月14日にNHKふれあいホールで公開録画とパネル展示があります。

◎ 増井美佳

  声帯を無くした祖父と会話する私が介護を選んだ理由

◎小柳知栄美

  「看護師さん」そばを通るといつも呼ぶあなたの前だけ看護師です   

2008年12月2日火曜日

平成20年12月

入選    長尾理菜
   
〇陽のあたる学校の門通り抜け手を振る友の元へ駆け寄る

(講評)日常の何気ない通学風景を詠んだことで、印象鮮明な一首になった。

入選    松澤美佳

〇離れても帰ってこようと思う街それが私の故郷です

(講評)故郷に対する望郷の気配を感じた。

入選    石川順一

〇球根の芽出す遅さを思い遣る冬の長さは報われるのか

(講評)球根の芽に春の訪れを待つ作者である。季節感をとらえ感性の良さが出た。

佳作    川崎恵

〇共に生き共に育った愛犬よ先に逝くなど嘘だといって

(講評)家族の一員であった老犬への愛情が伝わってくる。

佳作    堀川恵里奈

〇その昔大好きだった田んぼ道今はイナゴの姿も見えず

(講評)何気ない素材だが、郷愁とともに現在の索漠とした光景が目に浮かぶ。

佳作    小林綾子

〇テスト前好きな科目を先にやり後が辛いよ苦手な科目

(講評)気取らない感じが楽しくさせてくれる。

佳作    平賀麻依    

〇「ありがとう」その一言があったから私は今も頑張ってます

(講評)素直に感謝する様子が頭に浮かんでくる歌。

佳作    布施由里香

〇「ありがとう」いつものように声かけてくれるあなたに「ありがとう」

(講評)押しつけがましくない表現が心地よい。

佳作    希弥

〇君のため想う心が届かない人の心は難しいもの

(講評)自分の心のありようを思い返している。友は今どうしているのだろうか。

以上、講評   土永典明